奥深いところを
先日、不思議な偶然があった。テレビをつけると10年ほど前に飛び級で千葉大に入学した日本で初めての男性のその後を追っていた。大学院在学中にお子さんができ、生活のために今は船舶の長距離トラックを毎日12時間運転しているという。トラックに乗る彼の後ろには子供に人気なアニメのカレンダーが飾ってあり、地方都市の一軒家でご家族で穏やかにお暮らしだということを紹介していた。
その夜、寝る前の読書に長らく開いていなかった本の続きを読もうとしたら、まさに彼の当時を取材したインタビューと著者が印象に残った話を書いたところから読むことになった。
MITに入っても子供を十分に養うだけの生活費にはならないからと、手取り30万ほどのお仕事をされているという彼が、高校時代に東大に入るためのクラスから、千葉大に飛び級することになったのは、塾の講師から、”奥深いところを見るようにしなさい”と言われたことがきっかけだったという。
東大に入って官僚になろうとも、悪いことをしたと非難されるために東大に入るようなものだ、と考えて飛び級ができる千葉大を選択したんだそう。
自らが奥深く探りたいと思う世界の違いによって導かれる結果は異なる。彼はどこを深く探ることで今の人生を選択したのだろうかと少し考えていた。
奥深く探ることに最も適した世界から離れようとも、奥深く探るという作業はできるだろう。もちろんもしかすると彼は奥深く探るのをやめたのかもしれない。
いずれにせよ、驚くようなタイミングで彼のことを知る機会を得たことにはなんらかの意味があるのだろう。
奥深く探り続けようが、続けまいが彼が幸せであれば良いと思う。
私個人はそれをやめて幸せにはなれないだろうけれど。
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